第115話誰もいない

ジューン

薄いシャツを身につけたまま、わたしは浴槽に足を踏み入れる。ヘルメスは袖をまくり、湯船の縁に腰かけて、わたしを待っていた。笑いたい気もする。でも、そんな元気はない。まさかこのわたしが、ヘルメス・グランデに体を洗ってもらう日が来るなんて、夢にも思わなかった。

今の彼を見ていると――静かで、落ち着いていて、どこか家庭的で――胸の奥がじんわり温かくなる。あの、わたしのことなんてどうでもいいと言い放った男と、同じ人だなんて思えない。本当に、わたしは運がよすぎたのかもしれない。吐いたものまで片づけると言ってくれたのだ。そのことを思うと少し気恥ずかしい。でも……こうして彼に世話を焼かれるのは、...

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