第138章疑いの種

六月

彼の吐息が唇より先に、私の肌に触れた。

ためらいが伝わってくる――私たちのあいだ、たった一インチ。彼のぬくもりが、問いかけの幽霊みたいに私の口元をかすめる。胸が不揃いに上下して、間にある空気は、触れれば壊れてしまいそうなほど薄い。

「息をして」

彼はほとんど独り言のように囁く。

私は――息をする。

それから彼は、ゆっくりと動いた。慎重で、まるでこの瞬間にどう存在すればいいのか学び直しているみたいに。最初に触れた唇はためらいがちで、触れたか触れないかの軽さ。心臓が胸の奥で痛いほど脈打つ。彼の唇は冷たい。いい冷たさだ。

彼はほんの少しだけ身を引き、額を私の額に預けた。吐息が震えてい...

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