第16話トイレにいるあなたと私 2

   ~ヘルメス~

 もう終わりだ。

 全身をこわばらせながら、俺は心の中でそう叫ぶ。

 その瞬間、灯りがぱちりと点いた。

 くそ。

 彼女は感じた――わかる。俺のものが、硬く張りつめて、彼女の着ているコート越しに押しつけられていたことを。俺のコートだ。あれがあって本当に助かった。でなければ、とんでもないことになっていた。

 あと一秒でも長ければ、俺は自制を失っていた。彼女を机の上にひっくり返し、獣みたいにその中へ深く突っ込んでいたはずだ。どうせもう、体勢としてはできあがっていたのだから。

「申し訳ありません、社長!」

 彼女は金切り声まじりに、半ば悲鳴のように言った。

 俺は戸...

ログインして続きを読む