第166話彼に任せよう

ジューン

男性看護師が出ていってから二十分が過ぎたのに、なぜか私はまだヘルメスのベッドの脇に座っていた。触れられるほど近く、それでも壊れてしまわないふりができるくらいには遠い、その距離で。

私は何度もこっそり彼を盗み見た。病院が用意したノートに、ぼんやりとスケッチを走らせる彼の表情を読み取ろうとしていた。

どうして彼は、私に行ってほしくなかったのだろう。

彼の中の何かが、思い出していたのだろうか。

何かを感じていたのだろうか。

それとも、ただヘルメスが……ヘルメスだっただけ?

私は息を吐き、両手を見つめた。「ヘルメス――いえ、グランデさん。どうして私、看護師さんにお昼を買ってあげちゃ...

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