第17話恋してない、ただワクワクするだけ

六月

「あの人、笑ったの――ほんとに、心から笑ったのよ。あんなふうの彼、見たことない」

そう言って私は言葉を切る。もう頬が熱くなっているのがわかった。思い出すだけで、毎回こうして赤くなってしまう。

「で……あなたと最高経営責任者は、もうお友だちってわけ?」ケイラが眉を上げる。

「夜に書類整理のために呼ばれて、トイレに“気分転換”しに行って」――彼女は指でかぎ括弧を作る――「ゴキブリ見て悲鳴を上げたんでしょ?」

私は目をぐるりとさせ、まるでその記憶そのものを振り払おうとするみたいに手をばたつかせた。「そうよ! そしたらまるで白馬の騎士みたいに、あの人が駆け込んできて。どうしたって聞いて、...

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