第195話お腹すいた

~ヘルメス~

満ち足りたため息をひとつつき、俺はジューンを腕の中へすくい上げた。裸の身体は驚くほど軽く、俺の胸に触れる肌はあたたかい。麻のシーツをふたりにゆるく掛けたまま、浜辺から運んでいく。足元で砂がざくざくと鳴り、やがてヴィラへ続く小径の冷えた草へと替わった――彼女のヴィラだ。何か月も前から目をつけ、買ってここへ連れ去る夢まで見ていた場所。だが彼女は俺より先にやってのけた。あの大胆で自立した気性がきらりと顔を出し、くそっ、ますます敬意が増してしまう。

ジューンは胸に頬を寄せ、短い金髪が俺の肌をくすぐった。扉をすり抜け、寝室へと入る。

「お腹すいた……」

眠たげで柔らかな声。俺は彼女...

ログインして続きを読む