第201章雨とアレス

~ヘルメス~

彼女に対して自分がやらかした最悪のことは、去ったことだとばかり思っていた。

違った。

目の前にいるのはジューン――俺の女、俺の婚約者、そして俺の子どもの母親だ。生まれて初めて、胸の奥が弾丸の痛みよりもずっと深く疼くような事実に気づいてしまう。

俺は彼女に嘘をついただけじゃない。

彼女自身の現実を疑うよう、訓練してしまったんだ。

何かがおかしいと尋ねられても「何でもない」と言い張ったたび。

違和感を覚えた彼女の気配を、キスで押し流したたび。

俺が静かに消える準備を進めている間、彼女が必死に俺を愛してくれたたび。

俺は彼女に教え込んだ。自分の勘は間違っているのだと。

...

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