第204章:ハンドオーバー

作者視点

風がそっとソバ畑を渡り、淡い色の茎を黄金の波へと変えていく。白い絹のリボンは木の椅子に結ばれ、やさしくはためいていた。どこか遠くで音楽が静けさへ溶けていくなか、ジューンとヘルメスは野の花で編まれた簡素なアーチの下、向かい合って立っている。

ここには宮殿もなければ大聖堂もない。ただ空があり、大地があり、そして炎をくぐり抜けて生き延びた愛があるだけだった。

ジューンのドレスは畑の景色の中でやわらかく輝いていた――なめらかに流れる布地は親密なぬくもりを帯び、小さくふくらんだ腹部を、ひとつの約束のように包み込んでいる。向かいに立つヘルメスは、仕立てのよい黒いスーツ姿で、その手はわずかに...

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