第56話彼女とヤッたんでしょ?

~ヘルメス~

黄色いタクシーが走り去っていくのを見送る。目はナンバープレートに釘づけだ。LV〇四一二。

なぜそこに意識が張りつくのか、自分でもわからない。たぶん、さっき彼女が口にしたこと――あの可愛い唇からこぼれ落ちた真実の数々――その全部を、まともに思い出したくないからだ。

鼻で笑いが漏れた。彼女が「私たちはセックスしたのに、あなたは一度もそれを認めなかった」と言っていたことに、今になってようやく気づいた。

俺は彼女に、たくさんのことを言い、たくさんのことをしてきた……全部、頭の中でだけ。言葉も行動も、あまりに大きな音を立てていた。現実じゃないことを忘れていた。

そのせいで、彼女は...

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