第72話彼女は本当に頭がいい

~ヘルメス~

浴室に身を投げ出したまま、俺は喉の奥で毒づいた。またひとつ、肝心な機会を無駄にした。本来なら骨の髄まで搾り取ってやるべきだったのに、あいつをそのまま帰してしまったのだ。

「くそっ」

きつく目を閉じ、顎に力が入る。

あの女は、いったいどうしてあんなふうに存在していられる? 本当に、もう一度してくれと俺に懇願したのか? 飢えさせ、這いつくばらせるはずだった。なのに実際には、欲しがったものを与えたのは俺のほうだ。だが、俺が欲しかったものを手に入れたのかはわからない。

あいつには、俺が安っぽく見えたに違いない。

いや。主導権は俺にあった。完璧に支配していた。なのに、どうしてあ...

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