第85章キスでCEOを救う

六月

「どこへ行く?サンドイッチ、まだ食べ終わってないだろう」テーブルから飛び出し、エレベーターへ駆けていく私の背に、トビアスの声が響いた。足音が床を叩く。

けれど耳の奥で叫び続けているのは、それだけだ。グランデ氏はマスタードが嫌いなんて程度じゃない――致命的なアレルギーがある。しかもジョーダンが言っていたとおり、ひと口かじるまで気づかない。妙なことに、他のすべては完璧な男なのに、食べ物の細部に関してだけはどうしようもない間抜けなのだ。

はあ。いかにも。

ヴァネッサはもうあのトレーを出してしまったに違いない。そして彼は、今にも口にしようとしている。

くそ。

エレベーターがチン、と鳴...

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