第90話もう我慢できない

ジューン

口にするつもりなどまったくなかったことを打ち明けた瞬間、彼の身体がこわばるのがわかった。

「エルメス……グランデ……さん――」

目を合わせようとしたのに、その代わりに彼は私を強く抱き寄せた。腕の力は硬く、まるで自分のものだと言わんばかりで、私は余韻に浸ったまま息を吐く。さっきの行為――私たちのあの関係性――そのすべてが、まだ血の中に残っている。彼が私に主導権を握らせてくれるなんて思ってもいなかったのに、彼はそうした。しかも、私の決めたルールまで受け入れたのだ。

今夜の彼は、グランデさんではなかった。エルメスだった。

「エルメス……」

もう一度呼ぶと、浅い息がまた漏れた。

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