第93章呼吸

六月

ひとりの勇気あるスタッフが立ち上がる前に、部屋じゅうにざわめきが広がった。

「失礼ながら、社長。リトリートのゲームは、いつも混成チームです。そのほうがえこひいきも――妨害も起きませんから」

何人もの人がうなずき、同意の声があちこちから重なる。

「そうです、透明性が大事です」

「伝統ですし」

「ずっとそうやってきたんです」

ポールは板挟みになったような顔で、視線を最高経営責任者と皆のあいだで忙しなく行き来させる。長く張りつめた沈黙のあと、ヘルメスは椅子の背にもたれた。顎は固く結ばれ、それ以上ひと言も発しない。だが、頬の筋肉がぴくりと動いた。

彼はポールのほうを向き、続けていい...

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