第32章 再び牢に戻る

林夕葵が別荘へ戻ったのは、その翌日の午後だった。

電話はしていない。誰にも知らせず、そのままタクシーで別荘の門前まで乗りつけた。

新しく付け替えられたスマートロックは、もう彼女の顔を認識しない。玄関先で呼び鈴を押し、二分ほど待つ。扉を開けたのは、使用人の山口千代だった。

山口千代は林夕葵の顔を見た瞬間、ぎくりと肩を跳ねさせた。すぐに彼女の背後へ視線を走らせ、ほかに誰もいないことを確かめてから、ようやく身を引く。

「奥様……どうして……」

「秦野彰はいる?」

「旦那様なら書斎に」山口千代は声をひそめた。「林遥香さんも、ご一緒です」

林夕葵は小さく頷き、スリッパに履き替えて二階へ向...

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