第46章

「通報はしてあります。110番のほうから、その場で待つようにと言われました」

林夕葵はうつむき、自分の空っぽのポケットを見下ろした。スマホがない。

あの中には陸川時生の連絡先が入っていた。永川医師から受けている投薬の指示も。辰樹とのやり取りも。辰樹が生きていた頃、自分が送った音声メッセージも、一つ残らずあの端末に入っていた。

辰樹に繋がる、最後の欠片だったのに。

胸の奥がずきりと痛んだ。

ぶつけられたせいじゃない。もっと内側、心そのものが痛むような疼きだった。

「奥様……」

「大丈夫」

林夕葵は息を吸い、目元までこみ上げた熱を無理やり押し込めた。泣いている場合じゃない。いま一...

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