第2章

鎧のように固く身を包んでいた尊厳は、屋敷を出て車を走らせた瞬間、静かにひびを刻み始めた。ハンドルを強く握りしめ、指の関節が白くなる。

エンジンのハミングが耳の中で繰り返される。それはまるで、心の中で反響する亮介の声のようだった――穏やかで、丁寧で、どこか他人行儀な声。

冷静になれ、と自分に言い聞かせた。いつかこんな日が来ることは分かっていたはずだ、と。私はこの状況を上品に乗り越えられる大人なのだ、と。

でも……耐えられなかった。あまりにも、辛すぎて。

車は私の工房がある通りへと入った。ここには黒木家の邸宅のような壮麗さも、完璧に手入れされた芝生もない――あるのは、ありふれた赤レンガの建物と、少し古びた店の看板だけ。これが私の世界、現実的で、荒削りな世界。

車を停め、深呼吸を一つした。

鍵が錠で回る音が、やけに鮮明に響いた。ドアを押し開けると、慣れ親しんだ粘土の匂いが私を迎えた。薄暗い光の中、ろくろの上に置かれた作りかけの花瓶が静かに佇んでいるのが見えた。

昨日、亮介のために作ったものだ。すっきりとしたラインの白い花瓶。彼の机の上に飾られるところを想像していた。

今となっては、それも馬鹿げて思える。

花瓶に歩み寄り、その滑らかな表面を指でそっと撫でた。つい昨日まで、この作品を誇りに思っていた。これを見た時の亮介の目に宿るであろう輝きを、彼がかけてくれるかもしれない賞賛の言葉を、想像していたのに。

なんて馬鹿なんだろう、私は。

この瞬間、私の感情の防御壁はついに完全に崩壊した。

花瓶を両手で持ち上げ、床に叩きつけた。

「くそっ! くそっ! くそっ!」

陶器の破片が四方八方に飛び散り、割れる甲高い音が空っぽの工房に響き渡る。冷たい床に膝をつくと、堰を切ったように涙が溢れ出した。

自分の体を抱きしめる。袖のざらついた生地が、母がよく着ていた使い古しのセーターを思い出させた。母の、青白く痩せた顔が脳裏をよぎる。

「お母さん、あなたが正しかった。私たちは、いつまでたっても部外者なんだ」

母を思うと、さらに涙がこぼれた。泣きじゃくる子供だった頃に母が抱きしめてくれた時のように、床の上で体を丸めて自分を抱きしめた。

でも、もう誰も私を抱きしめてはくれない。

母は誰にも頼らず、女手一つで私を育てた。自立すること、強くあること、そして、私たちのような人間を雲の上の人間が本当に愛してくれるなんて信じてはいけないと、私に教えた。

それなのに、私はその教えを裏切ってしまった。

母の最期の日々を思い出す。病室で過ごした、あの苦しい時間。

「世良……」母の声は、春風に舞う羽根のように儚かった。「こっちにおいで、ここに座って」

私は母の青白い手を握った。手のひらの温もりが少しずつ消えていくのを感じながら。

「お母さん、もう喋らないで。休んで」

「いいえ、言っておかなければ」母は私の手を強く握り返し、その瞳にかつての光が宿った。「世良、私たちはあちら側の人間の下で生まれたの……男は私たちの気持ちをもてあそぶだけ。約束して、私の過ちを繰り返さないと」

その時、母は意識が混乱しているのだと思った。薬のせいで、ありえないことを言っているのだと。

「お母さん?」

母の声が、不意に明瞭で鋭いものになった。「あなたに話しておくべきだった……あなたの父親のこと……あなたの本当の出自について……」

しかし、母が言い終える前に看護師が入ってきて、休ませる必要があると言った。

それが、私たちの最後の会話になった。

私は床からゆっくりと立ち上がり、手の甲で顔の涙を拭った。

今なら母の警告が理解できる。なぜ母がいつも、自分を守れ、自立しろ、誰かの感情に依存するなと言っていたのかが。

でも、理解したからといって、痛みが消えるわけではなかった。

夜遅くにアパートに帰り着いた。私一人しかいない部屋は、恐ろしいほど静かだった。お茶を一杯淹れ、ソファに座って、混乱した思考を整理しようと試みた。

その時、母の遺品のことを思い出した。寝室のクローゼットにずっと保管してある。いくつかの写真と宝飾品を除いて、ほとんどの品物をきちんと見たことはなかった。

寝室へ行き、クローゼットの底にあった段ボール箱を開けた。中には母の古い日記や古い写真、そして見覚えのない書類がいくつか入っていた。

箱の底で、封をされた白い封筒を見つけた。

封筒にはこう書かれていた。「DNA検査報告書」。

日付は、母が亡くなる一週間前だった。

どうして母がDNA検査を? 他にどんな秘密を私に隠していたの?

私はその封筒を、まるで今にも爆発するかのように見つめた。母はDNA検査のことなど一度も口にしなかった。なぜ最期の数日間にそんな検査を? 何を探していたの? それとも、何を証明しようとしていたの?

無数の可能性が頭の中に押し寄せ、その一つ一つが私を不安にさせた。

この検査は、私の出自に関するもの? 私の父親についての?

私は封筒を手に取ったが、もう一度それを置いた。

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