第5章
テラスを吹き抜ける夜風は少し肌寒く、私は腕をきつく抱きしめながら、遠くの紺青色の山並みを見つめていた。宴会場での屈辱がまだ心に生々しく焼き付いている――佐藤夫人のあの傲慢な顔を思い出すと、吐き気がした。
「すまない」背後から聞こえた信吾の声は、低く、誠実さが滲んでいた。
私は振り返らなかった。「どうして謝るの? あなたは何も悪いことなんてしてないじゃない」
「もっと早く止めるべきだった」彼は私の隣に歩み寄り、テラスの石の手すりに寄りかかった。「静香も他の皆さんも、子供の頃から甘やかされて育ったんだ。血筋がすべてを決めると思い込んでる」
「違うの?」私は彼の方を向き直った。月明かり...
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3. 第3章
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