第6章
桜井隼が先頭に立って拍手を始めた。その表情は不気味なほど平静で、静まり返った試写室に彼の拍手だけがやけにクリアに響き渡る。
他のスタッフたちは顔を見合わせた後、それに倣ってぱらぱらと拍手を始めた。
「森川さん、役に入るの早いですね。感情表現がすごく自然で」と、助監督の一人が小声で評した。
「彼女と倉持監督のケミストリーが強すぎる。初共演だなんてとても思えない」
別のスタッフが相槌を打つ。
「桜井さんはどちらへ?」
私は俯き、誰とも目を合わせないようにした。
人波が少しずつ散り始めた頃、倉持修が私のそばに来て、声を潜めて尋ねた。
「彼が?」
脈絡のない一言。でも、...
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