第7章

桜井隼のマネージャーのオフィスは、私が想像していたよりもずっと狭く、壁には彼が担当してきたタレントの写真がびっしりと飾られていた。

私は暗赤色の革張りの椅子に腰掛け、目の前には分厚い書類の束が置かれていた。

「こちらは秘密保持契約書、こちらは財産分与協議書、そして婚姻費用に関する申立書です」

マネージャーは機械的に書類をめくり、その口調は冷淡だった。

「これら全てに、あなたの署名が必要です」

私はサインペンを手に取り、迷うことなくペンを走らせた。

「本当に内容を確認しなくていいのですか?」マネージャーは顔を上げ、わずかに驚いた様子を見せた。

「必要ありません」

私は静...

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