第38話

黒瀬律は、明らかにうろたえた。

癖みたいに目尻を赤くして、私を見上げてくる。黒瀬蓮と瓜二つの瞳には、今にも零れそうな涙がいっぱいに溜まっていて――まるで自分だけが、ひどい目に遭わされたみたいな顔。

……そう。委屈なんだろうね。

でも、だから何?

どうして私が、あんたをなだめなきゃいけないの。

今までなら、あの視線を向けられるだけで胸が痛くなって、言葉も出なかった。

真っ先に抱きしめて、耳元で優しく宥めて。好きなおもちゃを買って、好きな料理を作って。笑ってくれさえすれば、それでいいと思ってた。

――で、私の「ご機嫌取り」が返してくれたものは何?

幼稚園で、クラスの子たちに向かっ...

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