第40話

家に戻ると、神谷怜は私の腕の中で眠ってしまった。小さな頬には、乾ききらない涙の跡が残っている。

そっとベッドへ寝かせ、布団をかける。

それから窓辺に立ち、外の街明かりをぼんやり眺めた。

スマホが鳴った。

黒瀬蓮。

見慣れた名前を、私はしばらく凝視して――結局、通話を取った。

「……もしもし」

「白石紗月」

受話口の向こうから届く声は低く、気づかないふりをしたくなるほどの疲れが混じっていた。

「つまり君が離婚を言い出したのは……神谷様と、その子どもが理由なんだな?」

私は窓に背を向ける。

「黒瀬蓮」

笑った。自分でも驚くほど軽い笑い方で。

「自分が結婚に不誠実だからっ...

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