第47話

「――ああ、分かった。あなたが心配してるのは黒瀬じゃなくて、私のほうってこと? そうでしょ」

神谷悠真は一瞬きょとんとしたあと、口元をつり上げて嬉しそうに笑った。

「いやあ、泣けるな。よし、次の店行こう。海外出張の前に、今日は絶対うまいもん食わせる」

「じゃあ今夜は、遠慮なくたかるから」

私はくすっと笑って、彼と一緒に道路の向こうへ渡った。

私たちは気づかなかった。

店を出た瞬間から、窓越しにこちらを冷えた目で見つめる視線があったことに。

「藤崎杏奈、これ見て。ピンクのシャツ、可愛くない? 神谷怜、気に入るかな」

あの日以来、私の生活には珍しいほどの静けさが訪れた。

黒瀬も...

ログインして続きを読む