第53話

……これ。

こちらへ向けられたカメラを見て、受付の女二人が視線を交わした。頬の血の気が、目に見えてすうっと引いていく。

「黒瀬夫人、どうかお怒りにならないで……」

謝ろうとした、その言葉は最後まで届かなかった。

「高木様!」

来た男の顔を認めるや否や、二人の目がぱっと明るくなる。次の瞬間、私を指さして一斉に訴えた。

「この女が黒瀬様の奥様だって言うんです。でも黒瀬様にお電話しても繋がらなくて。規定どおりご退社をお願いしたら、スマホを出して、私たちがいじめたって騒いで……ネットで告発するって脅してきたんです!」

「へえ。白石紗月じゃないか」

高木直哉は、受付越しに私を見て、嘲る...

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