第9話

神谷悠真視点

白石紗月が病室を出た途端、神谷怜の表情がすっと変わった。

さっきまでの従順な子猫じゃない。牙を生やした幼い虎――そんな目をしている。

子どものものとは思えない冷たい光が瞳の奥でちらつき、空気がぴんと張りつめた。

「パパ。いつか必ず、白石紗月を……本当に僕のママにする」

「パパが嫌でも、結婚しなきゃだめ。紗月を大事にして、世界一幸せで、世界一お金持ちの女にして」

「……どうして、白石紗月なんだ?」

俺は怜を見下ろし、拒まなかった。ただ淡々と問い返す。

「これまで祖父さん祖母さんは、何人も見合い相手を連れてきた。お前は誰一人好きにならなかったな。女が近づくたびに、わ...

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