第59章

夜バー。

崎原傑はもともと酒場通いが好きだった。本川西子の一件が起きてからは、ほとんど毎晩のようにバーに入り浸っている。

「ねえ美女、こっちこっち。ちょっと抱かせてよ」

崎原傑は、つるんでいる悪友どもと個室で騒いでいた。

「おまえらは勝手にやってろ。俺、トイレ」

個室のトイレのドアを開けようとして、鍵がかかっているのに気づく。舌打ちして、ふらふらと部屋を出た。廊下の突き当たりにある共用トイレへ向かう。

廊下は不気味なほど静かだった。

鈴宮若葉は事前に店のオーナーに話をつけ、陸田哲に電話でひと言、釘を刺させている。店は早仕舞い。残っているのは、崎原傑のいる一室だけ。

私は、昔よ...

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