第5章

「私の日常を記録してほしいの……両親に、何か残してあげたいから」

車窓の外の風景が、猛スピードで後ろへ流れ去っていく。私たちが向かっているのは、もう久しく帰っていない私の家だ。

玲子は助手席に座り、慎重にカメラの角度を調整している。これが私たちの三回目の撮影であり、そして最もプライベートな回でもあった。

「本当に、明日さんの家に連れて行ってくれるんですか?」

玲子の声には、信じられないといった喜びが混じっている。

「私、どういう立場で伺えばいいんでしょう?」

「友達」

私は前方の道を見つめたまま、そっと答えた。

玲子はふいに静かになった。彼女がこっそりと顔を背けるの...

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