第6章

「これは新しい役作りのためよ、お母さん」

私は今日の天気を話題にするかのように、穏やかな口調で言った。

「私が演じる役は家が貧しくて、しょっちゅういじめられてるの。クラスの女子に美貌を妬まれて、寝ている間に髪を半分切られちゃうっていう設定で」

私は母の目を見つめ、そっとウィッグを外すと、まばらになった自分の髪を晒した。母の眼差しが揺らぐ。必死に表情を抑えようとしているのがわかった。

「それじゃあ、カツラじゃだめだったの?」

母が恐る恐る尋ねてきた。

私はウィッグを撫でながら、嘘を紡ぎ続ける。

「監督がリアルさを求めてて、まず髪を剃ってほしいって。その後の撮影では、いろん...

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