第141章 闇雲に動き回る

男は背筋の通った長身で、無駄のない黒のカジュアルをさらりと着こなしていた。落ち着いた、どこか温かみのある気配。眉と目元には、何年も会っていないはずなのに、ひと目で分かる懐かしい輪郭が残っている。

入江陽向だった。

数年の空白のあいだに、少年めいた青さはすっかり抜け落ちていた。深い眼差しと、黙っていても圧のある佇まい。けれど名取佳奈へ視線を落とした瞬間だけ、その硬さがほどけ、驚くほど柔らかくなる。

「陽向さん、どうしてこんなに早く来られたの?」

名取佳奈は驚きと喜びに目を見開く。ここ数日の重たい陰りが、思いがけない再会で少しだけ薄まった気がした。

「手配がついたらすぐ来た。放っておけ...

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