第32章 因縁の相手とばったり会う

陸野雲平は数秒だけぽかんとし、それから視線を落として、口元をゆるめた。

「先輩、そんなにかしこまらなくて大丈夫ですよ。いつか先輩がまた頂点に戻ったら……そのときは、俺みたいな後輩のことも忘れないでくださいね」

名取佳奈もつられるように小さく笑う。

「忘れるわけないでしょ。あなたの恩は、一生忘れない」

――この世界には、まだ自分を気にかけてくれる人がいる。誰も希望を捨てていないのに、どうして自分だけが諦められるのだろう。

名取佳奈は名刺をバッグにしまった。

「安心して。あとで必ず、その先生のところに伺うわ」

陸野雲平は少し考え、名取佳奈のために温かい水を注いだ。目尻の笑みが、いっ...

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