第34章 手はまだ治せる

場の空気がいっそう気まずくなる。薄井礼央はまだ何か言いかけたようだったが、ウェンナート医師は踵を返し、そのまま扉の向こうへ入っていった。

名取佳奈は彼の横をすれ違いざま、唇の端を嘲るように持ち上げる。

「薄井社長って、本気で思ってるの? 世の中の人間がみんな、あなたの金と肩書で動くって」

薄井礼央は眉間を押さえた。

「お前、ここで俺を笑いものにする必要はないだろ。お前が譲らないから、ここまで拗れたんじゃないか」

名取佳奈は思わず白目を剥きかけた。

何もしていないのに、なぜこちらが悪いことになるのか。そんな理不尽、飲み込めるわけがない。

けれど今は用事が優先だ。薄井礼央と須藤唯を...

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