第41章 彼は行っていない?

今日の薄井礼央は、これまで見せてきた紳士ぶりとはまるで別人だった。けれど名取佳奈は怯まず、真正面から彼を見据える。言葉は一音ずつ、冷たく、はっきりと。

「私、汚いのは……嫌」

薄井礼央の堪忍袋が完全に切れた。最後の理性さえ失ったように大きな手を伸ばし、彼女のイブニングドレスの背中のファスナーにかける。

名取佳奈は反射的にその手を払いのけ、同時に膝を引き上げて――容赦なく蹴り上げた。

鈍い衝撃。狙いは外れない。

脛が、男の最も脆く、最も致命的な場所に突き刺さった。

「……ぐっ」

薄井礼央が短く呻き、顔色がさっと白くなる。次の瞬間、身体がくの字に折れた。

名取佳奈は素早く距離を取...

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