128

心臓が絶え間なく高鳴っていた。ケンゾーとキッチンで繰り広げられた感情の渦を、心の中でまだ整理しようとしている。彼のあの振る舞いを責めることはできなかった。彼にとって私は『番(つがい)』であり、知らず知らずのうちに彼の内なる何か根源的なものを刺激してしまったのだ。けれど何より私を怯えさせたのは、彼を突き放すことができなかった自分自身だった。あの瞬間、彼の瞳は燃えるような矛盾を宿していた――むき出しで純粋でありながら、情熱と、欲望と、肉欲に満ちていて……。そのことを考えただけで体が疼き、彼を求める飢えが私を苛む。その飢えが、恐ろしかった。

キッチンから逃げ出したのは、間違いなく、今までの人生で...

ログインして続きを読む