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私のオフィスは広々としていて、控えめながらも高級感が漂っていた。これまで多くのオフィスに足を踏み入れた経験はなかったが、映画やテレビドラマで権威の象徴がどういうものかは見知っていた。瀟洒な木製のデスク、豪華なオフィスチェア、精巧な作りのキャビネット、そしてソファとアームチェアに挟まれた極上のコーヒーテーブル――それは、ひとかどの人物が持つべき調度品の数々だった。たとえば、ゼネラルマネージャーか、部門の部長か。それなのに今、私はここに立っている。スクリーンで見たのと同じような空間に。ただ、ここが私のものだという点を除いては。

部屋を歩き回るうちに、この状況全体の奇妙さがじわじわと身に染みてきた...

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