68

ハドリアンとカスピアンが、私の返事を待っていた。その期待に満ちた視線が、張り詰めた空気の中で私に突き刺さる。けれど、感情が真っ二つに引き裂かれている今、どう反応すればいいというのだろう? ハドリアンにとってかけがえのないものを自分が持っていると知り、心の一部は喜びで躍っていた。しかし、もう一方の心は悲鳴を上げて抵抗し、似たような状況に置かれた過去の記憶へと私を引き戻す。誰かの目から見て、自分がただのモノ、値段のつけられない所有物へと成り下がってしまう考えが、たまらなく嫌だった。持ち主は、どれほど価値があろうと自分の「モノ」に恋などしない。その瞬間、私は自分が文字通りの生きた輸血袋にすぎないと感...

ログインして続きを読む