第10章

神代哲司は透明な培養カプセルのガラス壁を優しく撫で、中に眠る姿を愛情深く見つめていた。

栄養液の中では、橘夜華と瓜二つの少女が静かに浮かび、穏やかで規則正しい呼吸を繰り返している。

「夏花、今朝、学校の桜並木を鵲が飛んでいったよ」

彼は旧友に語りかけるかのように、そっと声をかけた。

「覚えているかい？　明治の頃、君は鳥のさえずりを聞くのが一番好きだった」

培養カプセルの中の少女が微かに身じろぎし、その眠りの深い脳の奥底から、夢うつつに呟くような声が響いた。

「哲司……」

銀色の触手が哲司の背後から伸び、クローン生成の過程で残された微細な傷を消し去るかのように、カプセル...