私の彼氏は人ではない

私の彼氏は人ではない

渡り雨 · 完結 · 27.6k 文字

1.1k
トレンド
1.1k
閲覧数
3
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

彼氏の哲司と付き合って三年目、彼に浮気された。

真夜中、こっそりと学校の旧校舎へ向かう彼。

浮気の現場を押さえようと後をつけた私が見たのは……

地下室に転がる、十九人もの女性の死体だった。

そして、彼の本当の正体は……

チャプター 1

 深夜の桜ヶ丘学園は、不気味な静寂に包まれていた。

 私は旧校舎の壁に身をぴったりと寄せ、心臓が雷のように鳴り響くのを感じていた。

 つい先ほど、恋人がこそこそとこの廃墟同然の建物に入っていくのを、私はこの目で見てしまったのだ。

「どうしてこんな場所で逢い引きなんて……」

 そう、三年間付き合ってきた彼氏は浮気をしている。

 深夜に寮を抜け出し、怪しげな電話に出る時はいつも私を避け、普段はあれほど好きだった苺のショートケーキにさえ手をつけなくなった。それにLINEには、私には全く見覚えのない女の子の連絡先まであった。

 私は用心深く、軋む音を立てる木製の扉を押し開けた。古びた匂いが鼻をつく。

 スマートフォンの微かな光を頼りに、私は階段を一段一段下りていく。踏みしめるたびに、足元で不安を煽るような軋み音がした。

 地下室の扉は半開きになっており、中から微かな蝋燭の光が漏れていた。

 息を殺し、扉の隙間から中を覗き込む。

 次の瞬間、私は危うく悲鳴を上げそうになった。

 地下室の中央には、十九体もの女性の遺体が整然と並べられていた。

 薄暗くてはっきりとした輪郭しか見えないが、腐敗した死臭が私の全身を震わせる。

 床には血の付いた制服の切れ端が散らばり、他にも奇妙な形の儀式道具が転がっていた。古めかしい燭台、謎のルーン文字が刻まれた石板、そして明治時代に作られたかのような奇妙な機械装置。

 その時、地下室の奥に哲司の姿が現れた。

 彼はその奇妙な機械の前に立ち、手には分厚い古書を抱え、口の中で呪文のような言葉をぶつぶつと呟いている。

 蝋燭の光が彼の顔に不気味な影を落とし、普段は温和なその面立ちは、今や異常なほどに獰猛に見えた。

「夏花……ようやく……戻ってこれる……」

 哲司の声は低く、不気味で、いつもの優しい彼とはまるで別人だった。

 私は恐怖で魂が抜けそうになり、振り返って逃げ出そうとした。しかし、不意に足を滑らせ、壁に全身を強く打ちつけてしまった。

「そこに誰だ!」

 哲司が勢いよく振り返る。

 私は痛みも構わず、夢中で地下室から飛び出し、旧校舎の外まで一目散に駆けた。

 頭の中では先ほど見た光景が何度も繰り返され、両手の震えが止まらない。

「落ち着いて! 落ち着くのよ!」

 何度か深呼吸をし、スマートフォンを取り出して警察に通報しようとしたが、学校の奥まった場所では電波が届かなかった。

 私は必死に校門へと走り、時折振り返っては哲司が追いかけてこないかと怯えた。

 ようやく学校の正門近くまでたどり着くと、スマートフォンの電波がやっと回復した。

 警察に電話をかけようとしたその時、体育館の方からジャージ姿の若い男性が歩いてくるのが見えた。

 田中正義先生。学校に新しく赴任してきた体育教師だ。

「田中先生! 田中先生!」

 私はまるで救いの藁にでもすがるように、彼の方へ駆け寄った。

 田中正義は、深夜に校内をうろついている生徒を見て、本能的に眉をひそめた。

「橘さんか? こんな遅くにまだ学校にいたのか?」

「先生、私……私、すごく恐ろしいものを見てしまったんです!」

 私は田中の腕を掴み、切羽詰まった声で言った。

「旧校舎の地下室です! そこに死体が! たくさんの死体があったんです!」

 田中正義は一瞬呆気にとられたが、私の恐怖に引きつった表情をじっと見つめた。

「なんだって? 死体だと?」

「本当です! この目で見ました! 十九体も! それに血痕も! 床には血の付いた制服の切れ端が!」

 私は支離滅裂に説明した。

「哲司がそこで、何か変な儀式をしていたんです!」

 田中正義は私の真っ青な顔と震える両手を見て、ただの戯言ではないと悟った。

「本当に死体だと確信しているのか?」

「はい! 光が暗くて顔はよく見えませんでしたが、間違いなく死体です!」

 私は田中の腕を強く握りしめた。

「先生、どうすれば!」

 田中正義は一瞬ためらったが、生徒のあまりの怯えように言った。

「見間違いじゃないと断言できるんだな。まず私をそこに連れて行ってくれ。そもそも、うちの学校に地下室なんてあったか?」

 私は田中を連れて、足早に旧校舎へと引き返した。田中先生が懐中電灯で足元を照らしてくれる。

 地下室の入り口の扉は開け放たれたままで、哲司の姿はもうなかった。

 私は田中先生の後について中に入り、懐中電灯の光が地下室全体を掃いた。

 十九体の遺体は、依然としてそこに整然と並べられていた。だが今度は、懐中電灯の明るい光の下で、彼女たちの顔がはっきりと見えた。

 私の血液は、一瞬で凍りついた。

 一体一体の遺体の顔が……。

 全て、私と瓜二つだったのだ!

「なっ……」

 田中先生は息を呑み、危うく懐中電灯を落としそうになった。

「橘さん、この死体……彼女たちの顔は……」

 私の声は震え、ほとんど言葉にならなかった。

「どうして……どうして、みんな私と同じ顔をしてるの……?」

 遺体たちの顔は、まるで同じ型から抜き取ったかのように私とそっくりだった。ただ、あるものは肌が干からび、またあるものはつい最近死んだばかりのように見える。

 しかし、例外なくすべてが私だった。

 彼女たちの目は全て見開かれており、まるで声なく何かを見つめているかのようだった。

 最も恐ろしかったのは、彼女たちの表情から恐怖、絶望、そして言葉にできない哀しみが読み取れたことだ。

「こ……こんなことってあるのか?」

 田中先生は遺体たちと私を衝撃的な面持ちで見比べた。

「世界にこんなにも同じ顔の人間がいるなんて……」

 私は足の力が抜け、ほとんど立っていられなかった。

「わからない……何もわからない……どうしてこんなことに……」

「警察に通報しましょう!」

 私は震えながら言った。

 しかし、電話が繋がり、事情を話すと、電話口の受付担当者はこう言った。

「神代哲司さんが殺人を? 彼は先ほどまで、こちらで失踪事件の捜査協力をしていましたよ。三十分ほど前に帰られたばかりです。何か勘違いされているのでは?」

 私は目を見開いた。

「ありえません! さっき、地下室で彼を見たんです!」

「お嬢さん、失礼ですが最近、ストレスで幻覚でも見ていませんか?」

 受付担当者の口調には疑いの色が混じっていた。

 田中正義が電話を代わった。

「私は桜ヶ丘学園の教師、田中正義です。この生徒の様子が確かにおかしいのは事実です。今からそちらへ向かいます」

「そうですか。ですが、神代のご子息が先ほどまでいらっしゃったのは確かです。ご心配でしたら、確認に来ていただいても結構ですよ」

 二十分後、私たちが交番に駆けつけると。

 哲司が警察署の応接室に座っているのが見えた。スーツを身にまとい、見たところ全く普通で、警察官と談笑さえしている。

「夜華?」

 哲司は私に気づくと心配そうな表情を浮かべた。

「こんな夜更けにどうしたんだ? さっきまで君のことを心配していたんだぞ」

 私は哲司の両手を、食い入るように見つめた。

 指の間には、確かに微かな蝋燭の油の跡がある。彼は絶対に地下室にいた!

「さっき、どこにいたの?」

 私は恐怖を必死にこらえて尋ねた。

「図書館で資料を調べていたんだよ。明日の生徒会会議のためにね。そしたら警察から電話があって、こっちに来たんだ」

 哲司は瞬きをした。

「顔色が悪いぞ。具合でも悪いのか?」

 私は眩暈を覚えた。

 もし哲司が本当に図書館にいたのなら、私がさっき見たのは何だったのだろう?

 幻覚? でも、あの模型、写真、血痕……全てがあまりにもリアルだった!

「私……家に帰りたい。田中先生、送ってもらえませんか? 彼とは一緒に帰りたくない」

 哲司の顔に、見逃してしまいそうなほど微かな翳りがよぎったが、すぐにまた温和な笑みに戻った。

「具合が悪いなら、田中先生に送ってもらう方がいいだろう。僕はまだここで少しやることがあるから」

 田中正義は私と哲司を交互に見て、最終的に頷いた。

「では、私が橘さんを寮まで送ります」

 警察署を出る道すがら、私のスマートフォンが鳴った。見知らぬ番号からの着信だった。

「はい?」

 私は震える手で電話に出た。

「橘夜華さん?」

 電話の向こうから、若い女性の声が聞こえた。

「どうやら、神代家の秘密に気づいてしまったようね」

 私の心臓が速鐘を打つ。

「あなたは誰? どうして私の番号を?」

「そんなことは重要じゃない。重要なのは、失踪した女子生徒たちの真相を知りたいかどうかよ。なぜ彼女たちがみんな、あなたと同じ顔をしているのか知りたくない?」

 私はスマートフォンを強く握りしめた。

「何を知ってるの?」

「たくさん。例えば、神代家が長年隠してきた秘密。あなたの本当の正体。そして、あなたがどうしてこの学校に現れたのか」

 その声はどこか神秘的だった。

「もし答えが知りたいなら、明日の午後五時半に裏山で会いましょう」

 電話は突然切れた。

 田中先生が私の表情を見て尋ねた。

「どうした? 誰からだ?」

 私は通話の内容を田中先生に伝えた。彼の顔はさらに険しくなる。

「その秘密を知っている者がいるんだな。だが、危険なのは間違いない。橘さん、行くつもりか?」

 私は唇を噛みしめた。

「どうであれ、少なくとも何が起きているのかは知らなくちゃ」

最新チャプター

おすすめ 😍

追放された偽令嬢、実は超財閥の真の令嬢

追放された偽令嬢、実は超財閥の真の令嬢

288k 閲覧数 · 完結 · あざ鳥
「お前みたいな偽物の令嬢、さっさと山奥に帰れ!」

孤児だと判明した途端、彼女は養父母から冷酷に家を追い出され、婚約者も本物の令嬢へと乗り換えた。
彼らは、彼女がこれからド田舎で悲惨な生活を送るのだとあざ笑っていた。

しかし、彼女を迎えに来た実の家族は、なんと世界を牛耳る超巨大財閥の一族だった!
さらに、彼女自身もただの小娘ではない。その正体は、世界の医学界が平伏す伝説の天才医師だったのだ。

実家に戻るや否や、彼女は神業のようなメス捌きで次々と難病患者を救い、医療界の権威たちを圧倒していく。その圧倒的な実力に、誰もが恐れる冷酷なトップ御曹司でさえも彼女に惹かれ、無限額のブラックカードを差し出す始末。

一方、彼女を追い出した養父母の家業は倒産寸前に陥り、元婚約者も彼女の本当の姿を知って絶望の淵に立たされていた。
彼らが泣きついて許しを乞うても、彼女は冷たく言い放つ。

「今さら後悔しても、もう遅いわ」
冷酷非道な大物との政略結婚を強いられ、私は開き直った

冷酷非道な大物との政略結婚を強いられ、私は開き直った

40.2k 閲覧数 · 連載中 · 桜井 ゆい​
【前世】

ヤクザの家に生まれた宿命を恐れるあまり、私は幼馴染の周防文哉のもとへ逃げるように嫁いだ。

けれど結婚から五年――私は家畜のように囚われ、夫とその愛人に蹂躙され続けた。息絶えようとするその瞬間、最後に目に映ったのは、私の目の前で絡み合う二人の姿だった。


【転生】

再び目を開けると、婚約が公の場で発表されたあの瞬間に戻っていた。

周防文哉が愛おしそうに私を見つめ、優しく囁く。

「俺と結婚してくれ。」

次の瞬間――若きヤクザの組長が私の腕を掴み、力強く抱き寄せた。銃口は真っ直ぐ周防文哉に向けられている。

彼が、私の代わりに答えた。

「――断る」
人生を謳歌する

人生を謳歌する

2.7k 閲覧数 · 連載中 · 午前零時
大学生である私は、兄の家に住んでいた。兄嫁は魅力的で優しく、彼女のすべてが私が理想とする女性像そのものだった。青春真っ只中の私は、彼女と親密になることを夢見ることが多かった。そのような考えが間違っていることは十分にわかっていたので、できるだけ彼女と接しないようにしていた。しかし、驚いたことに、兄が勃起不全であることを知り、彼らは長い間夫婦生活を送っていないことがわかった。彼女は子供を強く望んでいて、兄が彼女を妊娠させることができないために、何度も涙を流していた。ある夜、彼女は私の部屋に入ってきて、「私に子供を授かってくれないか?」と尋ねた。パニックと興奮の間で、私は彼女の目を見ることができなかった。私はどうすればよかったのだろうか?
億万長者のシンデレラ

億万長者のシンデレラ

47.3k 閲覧数 · 完結 · Laurie
「キスはしない」彼の声は冷たかった。
そうよね、これはただのビジネスだもの……
でも、彼の触れる手は温かくて……誘惑的で……
「処女なのか?」突然、彼は私を見つめた……

*****

エマ・ウェルズ。卒業を控えた女子大生。継母のジェーンと義姉のアンナから虐待を受け続けてきた彼女の人生で、唯一の希望は王子様のような恋人マシュー・デイビッド。世界一幸せな女性にすると約束してくれた人。

しかし、彼女の世界は完全に崩れ去った。継母が老人から結納金として5万ドルを受け取り、彼女を嫁がせることに同意したのだ。さらに追い打ちをかけるように、愛する恋人が親友のビビアン・ストーンと浮気をしていたことを知る。

土砂降りの雨の中、通りを歩きながら、彼女は絶望の淵に立たされていた……

拳を握りしめ、決意した。売られる運命なら、自分で売り手になってやる。

豪華な車の前に飛び出し、立ち止まる。自分の処女は一体いくらの価値があるのだろう……

*****

デイリー更新
偽りの仮面

偽りの仮面

12.2k 閲覧数 · 連載中 · 彩月遥
夫が私に抱くのは、愛の伴わない性的な欲望だけ。
彼は、私との間に子供を授かることさえ望んではいない。

そればかりか、外では他の女性と戯れ、私の心を深く傷つける。

逃げ出したい。強く、自立した女性になりたい。
そう願う私を、しかし、彼が手放すつもりは毛頭ないようだった……。
全能令嬢の帰還、家族が倒産?

全能令嬢の帰還、家族が倒産?

126.3k 閲覧数 · 連載中 · きりゅう りんか
万能の女神・夏川紅蓮が実家に戻ると、一家は何者かの手で破滅に追いやられた後だった。
父は冤罪で獄中にあり、母は病に伏せっている。
六人の兄たちも、ある者は身体に障がいを負い、ある者は無気力に沈んでいた。
そんな折、家に潜り込んでいた偽令嬢は状況を見るや否や一家を見捨てて姿を消し、さらに屋敷までも奪い取ろうとしていた。
世間は夏川家を「落ち目の負け犬」と嘲笑い、皆がこぞって踏みにじる。

紅蓮が静かに一声を発すれば、暗部より無数の異能の士たちが姿を現し、形勢は一瞬にして逆転する。
父は無実のまま出所し、母は健康を取り戻し、廃人同然だった長兄は再び己の足で歩き出し、残る五人の兄たちもまた紅蓮の導きによって各々の才覚を花開かせ、やがて各界を牽引する大物へと成り上がっていく。

しかし、そんな彼女を指さして嘲る者がいる。
「夏川紅蓮は地味で野暮ったい田舎者だ」と。

何を隠そう、彼女は無数の隠された顔を持つ存在。
神医の令嬢も彼女なら、国画の大家も彼女。
伝説のハッカーも彼女なら、正体不明の謎の女優も彼女。
そして、暗部を統べる首領さえも——彼女なのだ。

そんな折、頂点に君臨する名門の若様が、彼女をそっと腕のなかに抱き寄せた。

「誰が彼女を田舎くさい地味女だと言った? 彼女こそ、俺・諏訪淳行の婚約者だ」

紅蓮が流し目をひとつ送る。

「婚約、破棄しなくていいの?」

「しない」

彼が長いあいだ追い求めてきた決して手の届かない高嶺の花こそが、いま腕のなかにいる婚約者なのだ。
解消などありえない——この婚約は、死んでも解消しない。
二百兆円の棚ぼた

二百兆円の棚ぼた

3.5k 閲覧数 · 連載中 · 文机硯
配達で生計を立てるダメ男、弓場風太郎は、彼女に裏切られ、御曹司に金で辱められた。

彼が絶望の淵にいるまさにその時、突然、思いもかけない横財、十兆円が舞い込んできた。

そこから、彼は逆転の人生を歩み始め、大富豪への道を邁進していく……
地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

26.4k 閲覧数 · 連載中 · 三日月プリン
「救うのは妹の方だ。お前は強いから、生き残れるだろう」
十八年間、空気のように扱われ、誘拐事件の際にも迷わず切り捨てられた私。
「強さ」という名の言い訳で死の淵に追いやられた私は、地獄の果てで生き延びた。
そして今、全国民が見守る超人気リアリティショーの舞台に、私は「かつての復讐者」として舞い戻る。
家族が偽りの善人面を振りまく中、彼らの仮面を一枚ずつ剥ぎ取っていく最高のショウタイム。
そんな私を面白がり、盤面をひっくり返す男がいた。冷徹なるF1チャンピオン。彼だけは、私の冷酷な正義を肯定し、その権力で私を囲い込む。
さあ、復讐劇の始まりよ。私を「可哀想な犠牲者」だと思っていた報い、その身に刻ませてあげる。
再婚後、クズ元夫が私に土下座した

再婚後、クズ元夫が私に土下座した

52.3k 閲覧数 · 連載中 · ニワハナ
長きにわたって、彼女は半身不随となった夫を献身的に看病し、時に自らの身を危険に晒して治験薬の投与にも協力した。自らの健康を蝕まれながら、夫を死の淵から引き戻したのだ。

しかし、夫がついに自力で立ち上がれるほど回復したその日、彼は初恋の女性を腕に抱き、こう言い放った。
「これからの人生、俺は彼女と、彼女のお腹の子を守っていく」

打ちのめされた彼女が離婚を切り出すと、夫は冷徹に彼女の口座をすべて凍結し、無一文のまま家から追い出し、嘲笑うように吐き捨てた。
「俺がいなければ、お前には何の価値もない」

彼女が妊娠検査薬をそっと隠し持ち、すべてに別れを告げて永遠に立ち去るまで、夫が慌てふためくことはなかった——。
妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

611.7k 閲覧数 · 連載中 · 蛙坂下道
鈴木七海は、中村健に好きな人がいることをずっと知っていた。それでも、彼との結婚を選んだ。
しかし、結婚して5年後、彼は離婚を切り出した。その時初めて、彼の想い人が私の父の隠し子(私の異母兄弟)だと知った。
離婚を決意した七海だったが、その時にまさかの妊娠が判明した。
元恋人の叔父に拾われた夜、私は彼という名の「毒」に溺れる

元恋人の叔父に拾われた夜、私は彼という名の「毒」に溺れる

11.6k 閲覧数 · 連載中 · 南宮
元恋人に裏切られ、冷たい玄関先で殺意を向けられたあの日。
私を見捨てた男ではなく、彼が一番恐れていた「危険な叔父」が、暗闇から現れた。
その腕の中だけが、この二年で初めて私を孤独から救い出した。
「次、誰かが君を傷つけたら、こうするんだ」 渡された銃の重みが、私の心に深く刻まれる。
私は逃げ出したかったはずなのに、いま、彼の甘い視線から離れられずにいる。 救いなどいらない。
ただ、この危険な男の「所有物」になりたい。
夫と息子に捨てられた私は、幸福という名の檻を抜け出すことにした

夫と息子に捨てられた私は、幸福という名の檻を抜け出すことにした

51.6k 閲覧数 · 連載中 · 白石 茉鈴​
嫁ぐ前は、夢見ていた。幸せな家庭を築けると信じていた。
しかし現実の結婚生活は、私を泥のような惨めな境遇へと引きずり落とした。
夫と息子にとって、私は愛人の飼い犬にさえ劣る存在でしかなかったのだ。
離婚届に淡々と署名する二人の姿を前に、私の心は不思議と静まり返った。
「そう、それでいいわ」
最後に乾いた笑みを浮かべ、私は決別を告げる。
今日で、私たちは正真正銘の赤の他人。