第6章

私はそのコルクボードを食い入るように見つめ、心臓が激しく脈打つのを感じた。

前田由香が遺した調査資料が壁一面にびっしりと貼られ、その一本一本の赤い線が、同じ一つの恐ろしい結論を指し示していた。

「この文字……到底、正気な人間が書いたものとは思えませんね」

田中先生が私の隣で低い声で言った。

「まるで狂人の戯言のようです」

だが、私にははっきりとわかった。

一見、何の関連もなさそうに見える歴史上の出来事が、実際には驚くべき内的な論理で繋がっている。

私の視線は、二枚の決定的な写真に落ちた。

一枚目には「明治35年(1902年) 北海道開拓」と記されている。写真の中...

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