第3章

「これ、あなたの分」私はテーブルの向こうへと大学の封筒を滑らせた。

彼は一瞬それを見つめてから、封筒を破り開けた。彼がそれを読む間、私はその表情を追う。最初は戸惑い、次に驚き、そして興奮とでも言うべき何かが浮かんでくる。

「奨学金、もらえた」と、彼は静かに言った。

「どの奨学金?」

「成績優秀者特待生制度。授業料全額免除の」彼は顔を上げ、目を輝かせて私を見た。「四百万円だぞ、姉さん」

私は向かいの椅子に深く沈み込んだ。「新、すごいじゃない」

「これなら、光兄さんの口座からお金をもらわなくて済む。全部、姉さんが使っていい」

その言い方に、胸が締め付けられる。まるで、私に経済的負担をかけることを申し訳なく思っているみたい。自分が重荷だと思っているみたいだった。

「あのお金は私たち二人のためのものよ」私は彼に言う。「光は、あなたの将来もちゃんと考えてくれていたの」

「姉さんのことも」

「私のことは自分でできるから」

まるっきりの嘘というわけではない。まだ、今は。

新は手紙を丁寧に折りたたんだ。「経営学を学ぼうかと思ってる。いつか自分の会社を立ち上げるのもいいかもしれない」

「光がやりたがってたみたいにね」

「うん」彼は未来の話をするときの、あの遠くを見る目になった。「家を建てるんだ。しっかりした家を。火事にも負けない、丈夫な家を」

夕食の間、私たちは彼の計画について語り合った。学生寮のこと、履修科目、将来のインターンシップ。私は質問をしたり、提案をしたりして、彼の卒業をそばで見守れるかのようにふるまった。

フリをするのは、繰り返すうちにだんだん簡単になっていく。

夕食後、新は部屋割りのことで友人の勇人に電話をかけに姿を消した。私はキッチンを片付け、それから薬を飲まなければならないことを思い出した。

薬瓶は、新が決して見ない調味料入れの裏に隠してある。私は小さな白い錠剤を一つ手のひらに振り出し、水で流し込んだ。

「姉さん?」

私は凍りついた。新の声が廊下から聞こえる。

「なあに?」と私は答えながら、薬瓶を小麦粉の容器の裏に押し込んだ。

「勇人が、来週末、大学を見に連れて行ってくれないかって」

「もちろんいいわよ」彼がキッチンの戸口に姿を現したのと同時に、私は振り向いた。

彼の視線がカウンターの上を走るが、怪しいものは何もない。水の入ったグラスと、普段通りの表情をした私がいるだけだ。

「本当に大丈夫?」と彼は尋ねる。「ちょっと顔色が悪いみたいだけど」

「疲れてるだけ。今日は大変な一日だったから」

彼は頷いたが、まだ私の顔をじっと見つめている。「また田嶋先生に診てもらった方がいいんじゃないか。もっと詳しい血液検査とか」

「大丈夫よ、新。本当に」

「そっか」でも、彼は納得していない顔だった。「俺、もう寝るよ。朝から仕事だし」

彼が二階へ上がった後、私はキッチンのテーブルで請求書の束を前に座った。電気代八千九百円。水道代六千七百円。電話代九千五百円。食料品にガソリン代、そして積もり積もっていくこまごまとした出費。

私は光の保険金の口座明細書と電卓を取り出した。

奨学金は助けになるけれど、新には教科書代や生活費がまだ必要になるだろう。年に五十万円くらいは。それに、家のローンや日々の支払いもある。

私は三度、計算をやり直した。

もし私が倹約すれば、新が大学を卒業し、その先少しの間、生活を始めるのに十分なお金はある。

でもそれは、私が高額な延命治療にお金を使わなかった場合の話。

私が自分のための時間を買おうとしなかった場合の話だ。

四度目の計算をしていたとき、鋭く焼けるような何かが胸を貫いた。電卓が手から滑り落ち、床にカチャンと音を立てて転がる。

私はテーブルの縁を掴み、息をしようと努めた。痛みは左腕を伝い下り、顎まで広がっていく。

いつもの痛みとは違う。もっと大きくて、もっと恐ろしい。

目を閉じて十まで数える。それから二十まで。痛みは薄れ始めたが、両手が震えていた。

二階から、新の目覚まし時計のラジオが奏でる穏やかな音楽が聞こえてくる。彼はもう眠っているのだろう。

私は電卓を拾い上げ、請求書を片付けた。すべてが、また元通りに見える。

でも、キッチンの明かりを消そうと立ち上がったとき、部屋がぐらりと傾き、回転が収まるまで壁に手をついていなければならなかった。

なんとか寝室までたどり着き、完全に足の力が抜ける前にドアを閉めた。

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