第5章

血圧計の隣にある椅子に、私は深く沈み込んだ。麗子さんは奥の部屋に消え、オレンジジュースのボトルと一口サイズのおにぎりを手に戻ってきた。

「これを飲んで。全部よ」

オレンジジュースは冷たくて甘い。それで少しだけ楽になった。

「少しは楽になった?」と彼女が訊く。

私は頷いた。

「ひどい顔色ね」と彼女は言った。その声には、この十年聞いたことのない響きがあった。心配、という響きが。「いつからこんな状態なの?」

「言ったでしょ、朝ごはんを忘れただけだって――」

「嘘つかないで」声が鋭くなる。「この薬が何のためのものか、私にはわかる。あなたくらいの年の子がこれを必要とするの...

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