第8章

病室は消毒液と、悲しみの匂いがした。

機械のビープ音で目が覚める。心電図モニター。点滴。鼻の下には酸素チューブ。私がずっと避けようとしてきたものばかりだ。

「目が覚めたか」

ベッドの隣の椅子に、新が座っていた。髪は乱れ、目は赤い。一体どれくらいここにいたのだろう。

「あなたが救急車を呼んだのね」と私は言った。声がひどく嗄れている。

「血を吐いて倒れたんだぞ。じゃあ、どうしろって言うんだよ?」

家で死なせてくれると思ってた。

でも、そんなことは言えない。彼がこんなに怯えた顔をしている時には。

「私、どれくらいここにいたの?」

「十二時間だ。心拍を安定させる...

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