第11章

 午後七時、個展は定刻通りに開幕した。

 会場は賓客で溢れかえり、フラッシュの光が絶え間なく瞬いている。スポットライトの中心に立つ成瀬は、あの自信に満ちた姿を完全に取り戻していた。

 午後の狼狽ぶりなどすっかり忘れたかのように、彼は称賛の嵐に酔いしれている。

 私はホールの隅、濃い影の中に立ち、その光景を冷ややかに見つめていた。

 手の中には、あのUSBメモリが硬く握りしめられている。

「本日はお忙しい中、僕の初個展にお越しいただきありがとうございます」

 成瀬はマイクを握り、深みのある演劇的な声で語りかけた。

「今日は、ある一人の女性に特別な感謝を捧げたい。彼女は僕のインスピ...

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