第103章

柔らかな感触が、胸元に押し寄せた。

未来の頭の中で、何かが音を立てて弾け飛んだ。思考が真っ白になり、全身が木石のように硬直する。

蒼司もまた、虚を突かれたように動きを止めていた。

鼻先を掠めるのは、ほのかな甘い香り。彼女特有の匂いに、湯上がりの清涼な香りが混じり合い、ダイレクトに脳髄を痺れさせていく。

ただ少し揶揄って、彼女の沈んだ気分を紛らわせようとしただけだった。だが、この予期せぬ役得は、男の理性を瞬時に揺さぶり、心猿(しんえん)を暴れさせるには十分すぎた。

「蒼司!」

我に返った未来の顔は、茹でた海老のように朱に染まっていた。彼女は慌てふためき、彼の漆黒の髪を鷲掴みにした。...

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