第104章

「道理で……」

未来は車のシートに散らばる数枚の紙片を、穴が開くほど見つめていた。

指先は強く握りしめすぎて白く変色している。その声は風に吹けば消え入りそうなほど儚げだったが、骨の髄まで凍てつくような寒気を孕んでいた。

「あの時、叔父さんが刑務所に入って、叔母さんが行方知れずになった途端、お父さんが何一つ文句を言わずに杏那を引き取ったわけだわ」

記憶の蓋が開き、過去の光景が胸を抉るように蘇る。

「昔からそうだった。私とお兄ちゃんが持っているものは、必ず杏那にも与えられた。それも、より良いものをね。喧嘩になれば、杏那が先に奪ったとしても関係ない。お父さんの口癖はいつも決まっていたわ―...

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