第111章

夕食が半ばに差し掛かった頃、蒼司の携帯電話が鳴り響いた。

通話を終えた彼は未来に視線を戻したが、その瞳には申し訳なさが滲んでいた。

「行かなきゃいけない。任務が早まった」

未来の胸の奥で何かがきしんだが、顔にはおくびにも出さず、ただ静かに頷いた。そして自然な動作で、彼の少し乱れた襟元を整えてやる。

「気をつけて。背中の傷、忘れないでね」

「ああ、わかっている」

蒼司は未来の口元を指で優しく拭うと、スーツの上着をひっつかみ、大股でホテルの部屋を出て行った。

「カチャリ」と、ドアが無機質な音を立てて閉まる。

部屋の中は、恐ろしいほどの静寂に包まれた。

先ほどまでの艶めかしい情事...

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