第28章

翌日。

未来が身支度を整えるや否や、蒼司から連絡が入った。

窓辺へ歩み寄ると、眼下には予想通り、控えめながらも圧倒的な気品を漂わせる黒のベントレーが停まっている。

階下へ降り、運転手が開けたドアから車内へ滑り込む。車は音もなく滑らかに発進した。

彼女は隣で目を閉じ、静かに安らぐ男の横顔を見つめた。結局、堪えきれずに小さな声で尋ねる。

「どうして、来てくれたの?」

蒼司はゆっくりと瞼を持ち上げた。朝の光を宿したその瞳は、どこまでも澄んでいる。彼は顔を向け、淡々とした口調で言った。

「妻のスピーチだ。夫として、顔を出すのは当然だろう」

「……」

未来の胸が、トクリと鳴った。

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