第32章

夫を奪い、かつて自分が待ち望んだ優しささえも奪い去ったのは彼女だ。

それなのに、恩師を訪ねることさえ、こうして汚名を着せられるとは。

羽龍は未来の剣幕を見て、理不尽極まりないと感じた。胸の奥に僅かに残っていた情も、これで完全に消え失せた。

彼は語気を強め、ボディガードに命じた。

「連れて行け。今日のことは、あいつの好き勝手にはさせない」

「羽龍、何様のつもり!」

未来は抵抗したが、訓練された二人のボディガードには敵うはずもない。

「今日、お前がわざと尾行してきたからだ」

羽龍は冷ややかに彼女を見下ろした。その瞳には、一欠片の温度もなかった。

ボディガードは主人の命を受け、遠...

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