第61章

舌先に、奇妙な渋みが一瞬だけ走った。それはあまりに微かで、気のせいかと思うほどだった。

未来は深く考えず、ワイナリーから新しく届いた銘柄だろう、独特な口当たりだわ、と軽く受け流した。

だが数分もしないうちに、下腹部の奥底から焼けるような熱が込み上げてきた。それは燎原の火のごとく、瞬く間に四肢の末端へと駆け巡った。

意識が朦朧とし始める。目の前で煌めくクリスタルのシャンデリアがぐにゃりと歪み、無数の光の残像へと分裂していく。

未来は必死に周囲を見回し、視線を一点に定めた。近くで給仕が片付けている盆の上には、彼女が先ほどまで口をつけていた数個の空きグラスが載っていた。

まさか私――酔っ...

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