第80章

翌日、未来が目を覚ますと、隣の場所は既にもぬけの殻だった。微かなぬくもりすら残っていない。

いつもなら自分で運転して地下駐車場へ向かうところだが、今日の彼女は違った。車をオフィスビルの正面玄関に横付けし、出迎えたバレーパーキングの係員にキーを渡したのだ。

「悪いけど、地下に入れておいて。ありがとう」

「かしこまりました」

陽光は麗らかで、壮大なオフィスビルのガラス壁に黄金の光が注ぎ、眩い輝きを放っている。

未来が階段を上り、ビルに入ろうとしたその時、予兆もなく背筋に悪寒が走った。

ほぼ無意識のうちに、未来は瞳孔を収縮させ、渾身の力で大きく後ろへ飛び退いた。

その瞬間だった――

...

ログインして続きを読む