第84章

翌日、病院にて。

白一色の病室には、消毒液特有の清冽で淡白な匂いが漂っていた。

医師が未来のふくらはぎの傷の処置をしている。ピンセットで薬液を含んだ綿球を挟み、皮肉がめくれた傷口を軽く拭うたびに、鋭い痛みが走る。

未来は眉一つ動かさず、ただ静かにベッドの背もたれに身を預け、されるがままになっていた。

その時、病室のドアが外から押し開けられた。

杏那は羽龍の腕にこれでもかとしがみつき、影のように寄り添いながら入ってきた。

彼女は目を赤くし、顔には計算し尽くされた心配と罪悪感を張り付けて、とろけるような甘ったるい声を出した。

「未来お姉ちゃん、加減はどう? 怪我をしたって聞いて、羽...

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