第34章

「今の奥様と結婚されてからは、接待の席でもほとんど酒を口にしないそうだ」

司はそう言って、口元に微かな笑みを浮かべた。

「奥様の管理が厳しくてね。小坂社長の愛妻家ぶりは有名で、業界じゃ恐妻家なんて噂されているくらいだ」

琴音の脳裏に、和也と寧々が絡み合う光景がフラッシュバックし、胸の奥に冷たい皮肉が広がった。

「じゃあ今日は、食事をしながらデザインのコンセプトを話し合うだけですか?」

琴音は尋ねた。

司は頷き、ルームミラー越しに彼女の顔へ視線を落とす。二秒ほど見つめ、すぐに目を逸らした。

「ああ。小坂社長は実用性を重んじる方で、理不尽な要求はしない。今日君を連れてきたのも、ある...

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